キリン電波書簡

一方通行の手紙です

三十四通目

前略

 梅雨明けとは何だったのかという長雨からの晴れ間でした。洗濯物が一気に片付いて良かったです。止まない雨には悩ましいものですが。涼しい夜が続いていたのは快適でしたね。昼間の暑さは耐えられますが、夜の暑さはなかなか耐え難い。

 先日数年ぶりにお財布を買い替えました。今までは皮と帆布の長財布を使っていましたが、味が出るとかそういうレベルじゃなくシンプルに汚らしい見た目になってきたのでいい加減変えたいなと思ってはいたのです。けれどそのお財布は使い心地もデザインも好きだったのでなかなか手放せずにいました。同じブランドのお財布を買おうと思ったこともありますが、残念ながら潰れてたんですよね。悲しい。

 とはいえ昨今の急速なキャッシュレス決済の普及から、お財布というものの重要度はかなり薄れてはいたのです。だからこそちょっとコンパクトな財布に変えたほうが良いのでは? と思い至り、購入を決めました。

 デザインと機能性と手触り。デザインはネットでいくらでも探せますが、機能性や手触りというのはリアル店舗でないと分からないので困ったものです。なんかこう、脳をハッキングして家にいながら実物の感触を得られる、みたいな技術革新に期待しています。やっぱり頭に電極刺すのだろうか。

「えー頭に電極刺すのなんて普通だよ。最初はちょっと痛いけど、あとはもう全然平気だよー。やっぱ昭和平成世代は考えが古いよねー」みたいなことを言われる未来が見えましたよ。

 

 まぁ結構悩むんだろうな と思ってお店を覗いてみたら案外サクッと惹かれるものに出会えました。折りたたみでコイン収納部分が大きく開いて取り出しやすい。焼いたおあげみたいな色をしていて気に入っています。

 やっぱり触る機会はかなり少ないですが、触ったらちょっと嬉しくなるようなお財布でした。

 いつか完全にキャッシュレスになる未来が来るかもしれませんが、もうしばらくはこの財布を持ち歩こうと思います。頭に刺した電極で決済ができるようになるまで。

 

 それでは未来が来たらまたお手紙を送りますね。どうぞご自愛ください。 

 

草々不一