キリン電波書簡

一方通行の手紙です

二十五通目

前略

 ご無沙汰をしています。気づけばもう10月で今年も終わりが見えてきました。秋は少しセンチメンタルですね。

 

 幸せの手触りってどういうものだと思いますか。私はさらっとしていて、でもしっとりともしている、子犬のお腹のようなものだと思います。残念ながら人間の赤ん坊は触ったことがないですし、他の生き物ももしかしたら同じような手触りになるのかもしれませんが、私の中ではそうなのです。

 共感覚というほどの大それたものではありませんが、あの手触りがすごく記憶に残っているのだと思います。

 幸せの匂いだと、何でしょう。パンが焼ける匂いもいいですね。春先や秋口など極端な気候から穏やかな気候に移り変わるときの香りも良いです。

 

 幸せの音はもうスティールパンです。天国の音だと思っているのに、どうしてこんな無粋な名前になってしまったのか甚だ疑問です。

 

 幸せの味。固めのカスタード、ヒレ肉。溶けたチーズ。翌日のポテトサラダ。カリカリのベーコンと半熟の目玉焼き。焼いたトマト。

 

 では幸せの姿とは。そればかりは私にもわかりません。幸せの事をわざわざ考えてしまう人間が幸せの姿を目にできるとは思えませんから。

 

 この手紙は熱に浮かされたあとに書かれています。みなさんもどうぞお元気で。
 それではまた。

 

草々