キリン電波書簡

一方通行の手紙です

50通目

 前略

 異常気象の激しい今日このごろですがいかがお過ごしでしょうか。私は意外と元気にやっています。珍しいでしょう。

 さて、11月15日をもって私が某所で投稿し続けてきた短歌が丸一年になりました。丸一年毎日投稿し続けました。総数371首。玉石混交ではありますが「まずは続けること」を目標に作り続けてきました。

 SNSをやっていると半年くらいで300首作る人も居たのですが、腐らず力まず自分のペースで走れたように思います。その殆どが仕事帰りにマッサージチェアに揺られながら生まれたものです。人体には短歌を思いつくツボがあるのだと信じています。多分背中。

 これからもずっと毎日投稿していくのは精神的に厳しいものがあるので、これからはちょっとクオリティを上げていきたいです。というのも、自信満々にダ・ヴィンチの短歌コーナーに送り付けていたのですが、かすりもしませんでしたからね。表現力と比喩力と着目点を養っていきます。とにもかくにもインプットですね。体験とか経験とか発見とかなんでもいいんですけれど。今まで語感優先で作ってきましたけど、やはりちょっと心揺れた瞬間があったほうが好きな歌になりやすかったです。それがたとえ正でも負でも。

 五感優先に切り替えていきましょう。

 

 少しだけ気に入っているものを書き留めておきますね。

 

蹴りあげて飛んでっちゃったローファーを 拾わず帰ろう今日は良い日』

 初期に詠んで「あー、こういう感覚か」と掴めたのをよく覚えています。仕事帰りにスタバで作りました。

 ローファーなんてどうでもいいくらいの楽しさと若さ、いいですね。

 

『しあわせのありかをずっとさがしてる どこでもなくてだれでもなくて』

 誰かとか何かとかっていつかは絶対に壊れてしまうので、そうじゃない幸せってなんだろう と思った気持ちを素直に詠みました。冬の朝の寒いバスの中でぼんやり考えていたのがそのまま歌になりました。

 

『「月曜が君を嫌いと言ってたよ。顔を見るのも憂鬱だって」』

 曜日シリーズ。自分が嫌ってても、いざ嫌っている相手から嫌われるとちょっとショックじゃないですか?

 

『さみしさを君の胸へと預ければ 振り向きもせずターミナル駅

 意外と前向きな歌です。預けた寂しさは捨ててください。

 

『さよならを一オクターブ上げたなら 君を見送る歌になってく』

 これも前向きなさよなら。寂しいけど歌にすれば楽しいよ。

 

『どしゃ降りで傘もささずにアラベスク 幕が上がれば私は独り』

 サウナ上がりに考えました。雨は降っていませんでした。どうしてもアラベスクって使いたかったんです。

 じゃあどういう状況なら面白いかなって思ったのが雨の中ってわけ。

 

『透明な気持ちにけりをつけたなら 色をつけようとびきりの赤』

 こういう強さがほしい。

 

『最悪を抱えたまんま生きている 生きていけると証明してる』

 最悪でもいいじゃん

 

『君の住む町を特急は過ぎてゆく 振り向きもせず アンタレスの火』

 銀河鉄道の夜。ターミナルの歌と繋がってんのかと今知りました。

 

『かんたんにちょきんと切った赤い糸 君の知ってるわたしはいない』

 Threadsのプロフィールに載せていました。ブランニューわたし

 

『もう二度と会えないような気がしてた 君の「じゃあね」のイントネーション』

 次はないんだろうな みたいな予感ってあるじゃないですか。

 

『いざさらば また会う日までお元気で さよなら讃歌 また来て地獄』

 いくつか作った段階で「ああさよなら讃歌だな」と思って詠みました。なので割と初期に作って一番最後に公開しようと決めていました。

 

「きみ」と「わたし」と「あなた」と「ぼく」のなるべく閉じた世界感が多かったです。これ中盤くらいから割と意図的にやっていて、知らない人が「きみ」の歌は詠まないようにしていると書いていたのが目に入って「え、べつに良くない?」って思ったので、気にせず存在しない「きみ」と「わたし」と「あなた」と「ぼく」の歌になっていきましたね。

 あまり広すぎる視界は、少なくとも今の自分にはできないなという判断でしたが、功を奏したかどうかは「あなた」が決めてください。

 

 これからしばらくは新作と旧Twitter(現X)未掲載分を載せていく予定ですのでどうぞよろしく。

 お気に入りがあったらこっそり教えてくださいね。

 それではまた。

 

 草々