キリン電波書簡

一方通行の手紙です

四十通目

 前略

 11月だというのに穏やかな気温の日が続いていますね。紅葉や落葉などがとても美しい季節で嬉しいです。

 先日髪を切りに行ってきました。いつものところです。美容院が好きだという話はいつかお話しましたが、今行っている美容院の美容師さんが非常に上手なのです。

 私の髪は硬いしくせ毛だしで伸びると始末に負えません。特にサイドが広がりやすいのが悩みのタネでした。行く先々で「それが悩みで……」と話すと、大概「じゃあサイド短くしちゃいますね」とバリカンで刈られて終わりということがほとんど。結局伸びたら膨らむし、結局定期的に切るしかないのか? と疑問半分納得半分でした。

 

 私は今まで美容師の指名をしてきませんでした。初めて行った美容院では初回に担当してくださった方を引き続き指名していたのですが(メガネだったから)担当の都合と自分の都合が合わなかった事が度々あったので次の美容院からはフリーで予約を入れました。どうせそんなテクニックを要する髪型ではないのだから誰でもいい。あとなんか女性美容師が多数の中男性を指名するのはなんか気持ち悪がられるのでは という自意識過剰もありましたしね。今ではそんなん向こうは気にしないだろうなと思えますが。(でもマッサージとか男性を指名するのはちょっと恥ずかしい。これも自意識過剰?)

 ただ、次第に担当がランダムなのも結構しんどいものがあるということに気付きます。前お願いしたことがあるようなないような、という感じで初めましてみたいなご無沙汰ですみたいな。カルテ的なものはどこでもあると思いますが、やはり仕上がりは結構ばらつきでますからね。

 そしてそろそろ別の美容院に変えようと思う頃、「次の美容院からはちゃんと担当を指名しよう」と決めていました。そしてずっと同じ人に切られるなら好みで選ぼうという最悪な動機で探していましたが、そもそも男性美容師が少ない上に性格合わないだろうな、という人がほとんど。メガネ美容師も絶対「漫画大好きッス。ワンピースとか」って言い出しそうな輩ばかりなので。いやいや、そもそも仲良くなりに行くわけじゃないのだから、どうせ施術中も寝てるんだからもうメンズカットが得意な人で絞ろう、と至極真面目な理由で選んだのが今の担当でした。

 見た目も全然好みじゃないし、大人しそうだけど実は……みたいなタイプだと思うんですが(勝手な妄想)、カウンセリングの時に初めて「じゃあこういう向きで切りましょうか。そうしたら下に向かって生えてきますし」と『伸びた時のこと』を考えて提案してきたのです。どういう切り方だったか正直憶えてないんですけど、あ〜〜〜〜そうなんだ〜〜〜とすごく感心しました。

 仕上がりは特に目立った変化はありません。単純な髪型なのでどこに行ってもさほど変わらないのは分かっていました。変わったのは伸びた後。2ヶ月後とか、下手すれば翌月にはさじを投げることが多いのですが、全く問題ない。切ってから3ヶ月後でもなんとか御せる程度でした。それからはずっと通っています。会話も必要最低限で、でも終わったときとかにちょこちょこ身につけているものを褒めてくれたり、なかなかできた男です。

 以来、二年近く通い続けています。プロフェッショナルの仕事というのは心地の良いものですね。こちらの環境が変わるか、彼が辞めない限りはお店を変えることはおそらくないでしょう。

 美容院ジプシーを続けてきて良かったです。

 

 それではまたいい感じに髪が伸びてきた頃お手紙しますね。

 

 草々